大型魚に与える生餌として、小赤やミルワームが良く使われています。
嗜好性の高い生餌ですが、人工飼料と比較した場合の栄養価について、気になっている方も多いのではないでしょうか?
小赤とミルワームの栄養価を分析して、クレストカーニバルやクレストキャットと比較しました。
ただし、小赤やミルワームが食べていたものや状態によって数値に影響があると思われます。
基本的な栄養素の比較
100gあたりの栄養価比較。ミルワームと金魚の分析は日本食品分センター調べ。人工飼料のビタミン値は添加量。
まず、粗タンパク、脂肪、リン、カルシウムという基本的な栄養素を比較してみます。
分析アイテム | 水 分(%) | 粗たんぱく質(%) | 粗脂肪(%) | リ ン(%) | カルシウム(%) |
---|---|---|---|---|---|
小赤(2〜3cm) | 82.9 | 12.1 | 1.0 | 0.60 | 0.91 |
ミルワーム (4.5〜5cm) |
65.4 | 20.3 | 11.1 | 0.25 | 0.018 |
ビッグカーニバル | 10%以下 | 40%以上 | 3.0%以下 | 1%以上 | 2 |
ビッグキャット | 10%以下 | 47%以上 | 3.0%以下 | 1%以上 | 4.1 |
ミルワームには非常に多くの脂肪が含まれていることが分かります。脂肪が多すぎると成長は早いかもしれませんが、脂肪過多や肝臓障害など様々な弊害をもたらす事が知られています。ミルワームを単独給餌した魚を解剖すると、体腔内に脂肪がついて、内臓や生殖腺を圧迫している事が多く見うけられます。
ミルワームはリン分が少ないことが目に付きます。通常リンは多くの魚種で0.5〜1.0%以上が必要とされています。
リン分が不足した場合、成長不良や背骨の湾曲などの影響が出る事が知られています。コケの原因として嫌われるリンですが、魚にとっては重要な栄養です。
カルシウムに関しては、魚は通常飼育水からカルシウムを直接吸収できるので、よほど特殊な環境で無い限りカルシウム欠乏の心配は少ないです。
ビタミン値の比較
100gあたりの栄養価比較。ミルワームと金魚の分析は日本食品分センター調べ。
人工飼料のビタミン値は添加量。人工飼料製造時のビタミン低下が気になる人は⇒こちら
分析アイテム | チアミン(ビタミンB1)mg | リボフラビン(ビタミンB2)mg | ビタミンB6 μg | ビタミンB12 μg | 総アスコルビン酸(総ビタミンC)mg |
---|---|---|---|---|---|
小赤(2〜3cm) | 0.17 | 0.18 | 89 | 21 | 3 |
ミルワーム (4.5〜5cm) |
0.3 | 0.49 | 0.34 | 0.28 | 7 |
ビッグカーニバル | 12 | 26 | 8000 | 700 | 17.3 |
ビッグキャット | 14 | 28 | 9000 | 800 | 180 |
ミルワームも小赤もビタミン量が多くありません。人工飼料と比較するとケタ違いに少ない事が分かります。
ビタミンが欠乏すると、成長不良はもちろんの事、免疫の低下による病気の発生など様々な障害が起きやすくなります。
栄養価の比較
100gあたりだと直感的に分かりにくいので、ビッグカーニバル1粒の栄養価を1として、小赤1匹、ミルワーム1匹とビッグキャット1粒をそれぞれ比較してみました。
人工飼料の重量は、粒の平均値です。
1粒重量 | タンパク量 | 脂肪量 | リン | カルシウム | チアミン (ビタミンB1) |
リボフラビン (ビタミンB2) |
ビタミンB6 | ビタミンB12 | 総アスコルビン酸 (総ビタミンC) |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ビッグカーニバル 0.18g | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
ビッグキャット 0.32g | 1.78 | 2.09 | 1.78 | 1.78 | 3.64 | 2.07 | 1.91 | 2.00 | 2.03 | 1.84 |
小赤1匹 3.5cm 1.3g | 7.22 | 2.18 | 2.41 | 4.33 | 3.29 | 0.10 | 0.05 | 0.08 | 0.22 | 0.12 |
ミルワーム 4.5cm〜5cm 0.7g | 3.89 | 1.97 | 14.39 | 0.97 | 0.04 | 0.10 | 0.07 | 0.00 | 0.00 | 0.16 |
ミルワームのみの単独給餌は、リスクがあるので魚の状態をよく観察しながら行った方が良いでしょう。
生餌は嗜好性の優れた餌ですが、人工飼料と比較して栄養バランスに劣る事があります。
単独の生き餌を長期間与え続けた場合、免疫の低下や繁殖率低下、成長障害が発生する可能性が高くなります。
生き餌には嗜好性が高いというメリットもあるので、どうしても生き餌しか食べない個体には、小赤やミルワームに人工飼料を与えてから給餌するとある程度不足しやすい栄養価を補給する事が出来ます。