TOP > 基礎研究 > 7つのハーブによる海水魚の魚病感染予防試験
これまで淡水魚に対する様々な寄生虫を駆除できることがわかっている7つのハーブに関して、海水魚のアミルウーディニウム症、白点病への効果が確認されましたのでご紹介します。
準備
Amyloodinium ocellatumの写真(キョーリン撮影)
(a)罹患魚
(b)鰭の寄生状況
スケールバー:(b)(c) 100㎛
(c)鰓の寄生状況
虫体の各発育ステージ
(d)トロホント
(e)トロホントからトモントへの移行期
(f)トモント
(g)〜(k)シスト
(g)
(h)
(i)
(j)
(k)
(l)〜(n)仔虫(渦鞭毛胞子、dinosporeまたはgymnospore)
(l)
(m)
スケールバー:(d)〜(n) 10㎛
(n)
給餌試験
下記飼料を4週間給餌(魚体重の2%/日)
考察
アミルウーディニウム症が蔓延した養殖カクレクマノミの稚魚水槽の中から兄弟となる48尾の魚を回収して給餌比較試験を行った。<寄生虫のカウントは、魚1尾ずつ光学顕微鏡で確認した。>対照区は全24尾が試験期間中に斃死したが、ハーブ区の斃死数は7尾にとどまり、17尾が生残した。また生残した17尾には、最終的に体表からエラの中まで寄生虫が全く見られなかった。また、その効果は給餌開始から1週間内に現れた。
準備
感染試験
水槽をセパレーターで5区に分ける
白点病発症魚(ハシナガチョウチョウウオ1尾)、ハーブ区、対照区の海水魚をそれぞれの区画に入れ経過観察。
※同じ飼料を引き続き給餌。発症魚には通常飼料を給餌。
試験結果
考察
通常飼料を与えたすべての対照区群で白点病が発生し、同居開始4日目にはルリスズメダイが1尾斃死した。 ハーブ区では2日間のみ(デバスズメダイ)の白点病発生となり、7つのハーブ配合飼料の給餌によって海水魚においても集団として 白点病が生じる期間及び頻度が低下したと言える。特にハーブ区の202日間給餌区では白点が全く出なかったことに注目したい。 本試験は感染源となる魚が1尾であったこと、また白点病が軽度であったため白点虫の濃度が十分に達しなかったことが明確な差が 見られなかった原因と思われる。83日間給餌した区に比べ202日間給餌した区で全体的に発生率が低い。 これは、魚のサイズが83日の個体は全長3〜4cm、202日の個体は6cm程度と大きく成長しており、体力、免疫力がより強いためと考えられる。
準備
感染試験
水槽をセパレーターで3区に分ける
感染魚のブラックモーリー20尾を中央の区画に収容し、ハーブ区に11尾、対照区に12尾のカクレクマノミを入れ経過観察。
※同じ飼料を引き続き給餌。発症魚には通常飼料を給餌。
考察
通常飼料を与えた対照区でピーク時に12尾中3尾白点病を発症したが、ハーブ区では発症が見られなかった。 対象区のカクレクマノミが発症するまでに10日間かかっているが、海水の白点虫のライフスタイルを考えると妥当といえる。 発症したカクレクマノミにおける白点の数は数個未満であり、爆発的な感染は起こらなかった。本試験では、対象区のカクレクマノミも ハーブ配合飼料の破片を食べている可能性がある。また、ハーブ成分の残餌からの遊離や魚からの排出によって試験水中にハーブ成分が 入っている状態であるが、対照区への感染が成立した。このことから、体内のハーブ成分蓄積が感染防御の鍵を握っている可能性がある。