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基礎研究-laboratory study-

7つのハーブによるコショウ病の感染予防試験

これまで寄生虫のダクチロギルス、ギロダクチルス及び白点虫の駆除効果が確認された7つのハーブに関して、コショウ病への効果が確認されましたのでご紹介します。

実験者:西川洋史 博士(海洋科学 東京海洋大学)

準備

  • 供試魚
    プラティ
    2区、2つの水槽に50尾以上ずつ収容して1日1回下記飼料を給餌し122日間飼育
    ハーブ区・・・7つのハーブ配合飼料
    対照区 ・・・通常飼料
  • コショウ病の感染魚
    ラスボラ・エスペイ(トリゴノスティグマ・エスペイ) 7尾
  • 寄生虫
    ウーディニウム科ピスキノウーディニウム属の鞭毛藻類の一種

同居感染実験

水槽をセパレーターで5区に分ける
コショウ病発症魚(ラスボラ7尾)を1区画に、ハーブ区、対照区のプラティを交互に10尾ずつそれぞれ2区画に導入

※同じ飼料を引き続き給餌。発症魚には通常飼料を給餌。

同居感染実験 試験イメージ

試験結果

コショウ病発症による斃死魚数
コショウ病発症による斃死魚数
試験結果グラフ
試験結果グラフ

考察

同居感染試験開始後、プラティに黄色い粒子が生じ、コショウ病の感染を確認した。コショウ病の感染源であるラスボラエスペイは試験開始翌日から斃死が始まり、6日目に全滅した。対照区のプラティは最終的に生残数がA区で5尾、B区で4尾となった。一方ハーブ区では、A区で9尾、B区で8尾が生残した。試験終了時の生残率は、対照区で45%(9/20)、ハーブ区で85%(17/20)となり、ハーブ給餌区の生残率が約2倍となった。これは、7つのハーブの給餌がコショウ病を予防する可能性があることを示している。

試験:山崎研究所

準備

  • 供試魚
    ニューレッドゴールデンネオン、インドネシア産
    コショウ病の感染魚を2区、4つの水槽に12尾ずつ収容して飼育
  • 寄生種
    Piscinoodinium pillulae(Schäperclaus, 1954) Lom, 1981
    温水性の淡水魚全般、特に海外からの輸入熱帯魚によく見られる渦鞭毛虫ないし渦鞭毛藻の一種。白点虫よりも小型の白点が鰭や体表、鰓に見られるのが特徴。
  • 罹患魚

    罹患魚
  • 鰭の寄生状況 (スケールバー:100㎛)

    罹患魚

虫体の各発育ステージ (スケールバー:10㎛)

  • トロホント(成虫)

    トロホント(成虫)
  • トロホントから トモントへの移行期

     トロホントから トモントへの移行期
  • トモント(シストになる前のステージ)

    トモント(シストになる前のステージ)

シスト(殻の中で大量の仔虫が発生)

  • シスト(殻の中で大量の仔虫が発生)
  • シスト(殻の中で大量の仔虫が発生)
  • シスト(殻の中で大量の仔虫が発生)

仔虫:渦鞭毛胞子、dinosporeまたはgymnospore
鞭毛を持ち、水中を移動寄生する

  • セロント
  • セロント
  • セロント

給餌試験

下記飼料を4週間給餌(魚体重の2%/日)

  • ハーブ区
    7つのハーブ配合飼料
  • 対照区
    通常飼料

試験結果

発症数(発症魚/試験魚数)
発症数(発症魚/試験魚数)

考察

全体的にコショウ病を発症したニューレッドゴールデンネオンの水槽から、48尾の魚をランダムに回収しハーブ区と対照区に分けて給餌比較試験を行った。寄生虫の有無は、魚1尾ずつ光学顕微鏡で確認した。対照区は全24尾中19尾が試験期間中に斃死したが、ハーブ区の斃死数は5尾にとどまった。さらに2週後以降に生残した19尾には寄生虫が全く見られなくなった。これにより7つのハーブを配合した飼料には、コショウ病の原因となる寄生虫を駆虫する効果があると考えられ、その効果は給餌開始から1週間内に現れた。